はじめてものがたり

 

 

 

聖獣の宇宙。

緑萌ゆる美しき聖地。そこは一年中野花が咲き乱れる常春の地である。

その地に佇む、女王が住まう城。その中庭に二つの影があった。


「ふふ、フランシス様ったらご冗談ばっかり!」

「つれないですね、レディ。私が嘘を言っていると?」

「もう!騙されませんよ!」


影のひとつは、腰まである三編みを揺らし楽しげに微笑む少女、エンジュ。

彼女は神鳥の宇宙からこの若き宇宙に迎えられた伝説のエトワールである。
多くの困難を乗り越えこの宇宙と女王を救ったのは、もう半年も前の話だ。
サクリアを満たし安定期を迎えたこの宇宙に、期間一年の約束で迎えられたエンジュは、その後もエトワールとしてこの地に留まることを決めた。


エンジュと向かい合う黒髪の青年の名はフランシス。

白い肌にその美貌で女性達の目を惹かぬ時はない彼は、また無類のフェミニストでもあり、サイコセラピストであった頃から女性の支持は絶大だ。

彼こそが、この聖獣の宇宙に誕生した守護聖の一人、眠りを司る闇の守護聖であった。


二人は執務を抜け出し、中庭で会話を楽しんでいた。

「聞きずてなりませんね、レディ。私が貴方を可愛らしい人だと思ってはいけないのですか・・・?」

美しく整った眉を優美に寄せながら、フランシスは悲しげな表情を作る。

「ヤダッ!そうゆー意味じゃないですから!」

慌てて否定するエンジュにほほえましさを覚え、フランシスはクスクスと笑い出す。

その姿を見たエンジュも、初めは笑われたということにムッとした顔をしたが、すぐに同じように笑い出した。

誰もいない静かな中庭で、二人の楽しげな笑い声だけが微かに陽光に暖められた空気を震わせていた。

 

その光景を執務室から見ていたものが一人。

険しい色を湛え、フランシスを睨みつける、金色の瞳。

目覚めを司る光の守護聖、レオナード。



 

「おや、レオナード。ご機嫌よう」

大きな窓が壁際に並び、傾きかけた夕日の赤が辺りいっぱいに入り込む廊下、フランシスは向こう側からやってくる光の守護聖に目を留め、美しく微笑む。
日も傾いてきたので、という理由で、彼はエンジュをアウローラ号まで送り届け、サボった分の仕事を闇の館に持ち帰ろうと城にある自分の執務室に向かう途中であった。

対するレオナードは、返答はおろか、剣呑な雰囲気を隠そうともせず、フランシスを睨みつける。
その瞳はただ激しく、憎悪すら感じさせるものだったが、フランシスに動じた様子はない。


「オメー、アイツとどーゆー関係なんだよ」

暫く睨みあいの沈黙が続いたが、耐えかねたようにレオナードが口を開いた。

「アイツ、とは?」

「しらばっくれてんじぇねー」

「・・・そう言われましても・・・ああ、」

相手を焦らすかのような間をたっぷりとり、口端をつっと上げ、演技染みた表情を作る。

「エトワールのことですか?」

「・・・ッ」

人を嘲笑うかのような表情と口調に、耐え切れぬほどの不快感が募る。

「おや、当たりですか?・・・ああ、アナタは彼女のことが・・・」

「それ以上言ったらブチ殺すぞ!!」

どんっ!!

勢いのままにその手首を壁際に押し付ける。

フランシスは一瞬苦痛に歪んだ表情をしたが、それもほんの短い間で、すぐにいつもの穏やかな微笑みの仮面を刷いた。

「・・・本気なんですか?10歳も年下の女の子に・・・」

「うるせぇ!お前はどうなんだよ、あ?!」

「私は・・・彼女は私にとって、妹のようなものですよ。恋愛対象ではありません」

「・・・・」

レオナードは、安心したような、孤独を耐えるような、複雑な表情だった。

今までの不快を露にした瞳は色を失せ、ただ障害のある恋に悩み、憔悴した表情のようだった。

その瞬間、フランシスは無意識に片方の腕だけ戒めを解き、俯いたレオナードの頬にあてがった。

「片思いと言うものは辛いものですね・・・叶えるのが難しい恋とあらば、尚更」

彼の顔には相変わらず穏やかな微笑みがあったが、その闇色の瞳の奥には微かな切なさが見えた。

驚いたように顔を上げ、レオナードはフランシスを凝視する。

「・・・いらっしゃい、貴方に、安らかなる眠りを与えましょう」

 

 

闇の館。

闇の守護聖が住まうそこはフランシスの屋敷である。

フランシスがレオナードをつれてこの屋敷につく頃には、辺りは薄闇に包まれ、光の灯らない闇の館は人気もなく、レオナードに寂寥感を与えた。

 

「おい、安らかなる眠りって・・・なんだよ」

ここにたどり着くまで二人の間にはただ沈黙ばかりが漂っていたが、やはりそれを破ったのはレオナードだった。

「聖地とはまさに聖なる地ですね・・・穢れなどひとつもない」

問いを無視し、話題を変える。

「・・・・」

「金銭欲も・・・出世欲も・・・肉欲も」

「おまえ・・・」

自室の重厚な扉を押し開きながら、フランシスは後ろを歩くレオナードに艶然とした微笑を向けた。
「肉体はね、精神と直結しているんです。その反対も然り。どちらかの苦しみを取り除いてやれば、少しは楽になりますよ」

言いながら、フランシスはレオナードを一人で寝るには大きすぎるほどのベッドに横たえさせる。

「ふ・・・ん、つまり、身体張って俺のビョーキを治してくださろうってんだ、サイコセラピストサマは!」

皮肉げな表情をつくりつつも、抵抗する気は無いのか、そのままベッドに仰向けになる。

「いいえ、違いますよ・・・これは・・・」

脱がしにくそうな服をさして苦労する様子も無く脱がせながら、フランシスの口唇はレオナードの肌を彷徨う。

「これは・・・貴方だけじゃなく、私も・・・・」

「くっ」

フランシスの口唇がレオナードの性器に触れた。

フランシスの口淫は、決して上手くは無かったが、久々の快感に、自我を忘れそうになるほどだった。

「・・・くっそ・・・ぉ」

耐えかねたように、自分の上に乗っていたフランシスを今度は自分の下に組み敷き、前戯も殆ど無く、想いのままに貫いた。

愛の行為等と呼べぬ荒々しい暴力行為だったが、フランシスは何も言わずその痛みに耐えた。

だがただ一度、レオナードがフランシスの口唇を奪った。

激しい口付けに、これすら愛の行為等とはお世辞にも言えなかった。

暴力的な性交渉の後、裸のままで眠ったフリをするフランシスを後に、何も言わずレオナードは立ち去った。

 

だが、フランシスは幸福だった。

例え気持ちが伴わない行為だったとしても、これこそ、フランシスが望んだ結果だったのだから。

男同士というタブーがある限り、肉の交わりこそ最上の証であると、そう思っていた。

 

 


 

なんてね!

なんつーマイナーなものを。

でも書いちゃったんでのせちゃえ!

 

 

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